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- 田中冨久子のホルモン学講座 -
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第1回: エストロジェンと睡眠の
深い関係
第2回: 閉経はヒトの進化を示す
ものだというが
第3回: エストロジェンは最も古代
型の性ステロイドホルモン
第4回: エストロジェンは女性の
からだと心にこんな作用をおよぼす
第5回: 女性の更年期症状は
交感神経活動亢進と副交
感神経活動低下の現れ
第6回: 女性の脳はエストロジェン
によって活性化される
- エストロジェンによる
アセチルコリンの分泌
第7回: アルツハイマー型認知症
とエストロジェンの関係
(1)原因物質アミロイド
ベータ蛋白の脳内増加は
40代後半から始まる
第8回: アルツハイマー型認知症
とエストロジェンの関係
(2)アミロイドベータ蛋白
の脳内増加はエストロ
ジェンの減少と関係
第9回: アルツハイマー型認知症
とエストロジェンの関係
(3)17ベータ-エストラジ
オールの補充が認知症
発症を効果的に抑える
第10回: ホルモン補充療法の意義(2013年ホームページのご挨拶から)
- 診 療 時 間 -
木曜日: 9:00 ~ 12:30
14:30 ~ 18:00
男性外来 18:00 ~ 19:00
金曜日: 9:00 ~ 12:30
14:30 ~ 18:00
土曜日: 9:00 ~ 12:30
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 田中冨久子のホルモン学講座
田中冨久子のホルモン学講座第5回 女性の更年期症状は交感神経活動亢進と副交感神経活動低下の現れ
 この講座から、これまでの「である」調をやめて、「です」「ます」調でお話します。 つい最近、「です」
「ます」調で書いた「女の老い/男の老い」という本を出版したので、その調子から抜け出しにくくなった
からです。

 今回から、閉経前後の女性のからだに起こる様々な体調の変化の原因についてお話したいと思いま
す。体調の変化は一般に更年期症状とよばれますが、高じると日常生活にまで支障を来すようになり、更年期障害とよばれるまでに発展します。本症状が生涯初めての血中エストロジェンの劇的な変動に
よってもたらされることはご存知の通りなのですが、その詳細な原因が何なのかこれまで一般にはあまり説明されてきませんでした。そこで、私のもっている生理学、内分泌学、脳科学などの知識を総動員
して、それでも分からなかったら、さまざまな方法で調べて、皆さんに説明していこうと考えています。

 更年期前後に起こる様々な症状については、本クリニックのホームページ「診療案内」にまとめて書いておきました。そして、本講座ではまず、のぼせ、発汗、寒気、冷え、動悸、さらに、吐き気、食欲不振、
腹痛、便秘/下痢、排尿障害、頻尿等につて、その原因をお話しようと思います。結論から言いますと、
これらの症状は、一部、自律神経失調のため、とまとめられ、あとその他とされていますが、本当は、
総て、自律神経系の働きの異常から来ていると考えられると思います。

 では、自律神経系とは何でしょうか。私たちの生命や種族保存を維持するための最も基本的な機能
は、血液の循環、呼吸、食物の消化、代謝、分泌、体温維持、排泄、生殖などで、これらは意志をとも
なわずに無意識的に行なわれていて、内臓機能ともよばれます。この調節に関わるのが自律神経系
で、神経が刺激して収縮させるのは平滑筋、心筋、分泌腺、また、呼吸などに関わる特別な骨格筋で
す。一方、私たちは意志をともなって意識的に行なう活動も行なっていて、運動機能ともよばれます。
その代表は自ら考えて行なう学習や創造的な行動です。運動機能に関わるのは体性神経系と呼ばれ、この神経が刺激して収縮させるのは目、耳をふくむ骨格筋です。

 自律神経系は交感神経と副交感神経という異なる二つの系から構成されています。自律神経系に
よって動かされている内臓臓器の大部分は交感神経と副交感神経による二重の支配を受けていて、
さらにそれらの支配の仕方が反対である、という特徴があります。これを拮抗支配といいます。例えば、心臓の機能は交感神経によって促進されますが、副交感神経によって抑制されます。胃/腸管の運
動や消化液の分泌は交感神経によって抑制され、副交感神経によって促進されます。これらのことを、他の臓器を含めて、表1にまとめました。もう一つ大事なことは、二つの神経系の支配下にある臓器で
は、一方の活動が高まれば、もう一つの活動は抑制され、両系の力が平衡するところにその臓器の活
動状態が維持される、という関係にあることです。  

 これらの生理学的基礎知識をふまえたうえで、本論に進みます。まず、大変重要なポイントに触れま
すと、これまでの生理学は、エストロジェンをはじめとする性ステロイドホルモンが自律神経系の活動
に何らかの影響を与える可能性などということには全く無関心でした。そのため、これまでの教科書で
も、閉経によって血中エストロジェンの急激な低下が起きる事態に至った時何かが起こる、などとは考
えてもいません。ところが、臨床医師らから発せられる女性更年期障害の情報は様々な領域の研究者
を動かし、自律神経系とエストロジェンの関係について、かなり明瞭な結論を得るところまで来ました。

 その結論とは、エストロジェンは交感神経の活動を抑制し、副交感神経の活動を促進する、ということ
です(※文献1)。したがって、もし閉経によって血中エストロジェン濃度が低下すれば交感神経の活動
が亢進し、副交感神経の活動が低下する、ということになるのです(※文献2)。そして、ホルモン補充療
法は交感神経の活動を低下させました(※文献3)。さらに、エストロジェン受容体が脳幹や脊髄にある
交感神経や副交感神経の中枢のニューロンに存在することを示した研究も多数発表されています(※
文献4)


 個々の更年期症状については紙面の関係で述べませんが、交感神経活動の亢進によって動悸(心
拍数の増加)、発汗(汗腺からの分泌増加)、冷え(皮膚動脈の収縮)がおこること、副交感神経活動の低下によって吐き気、食欲不振、腹痛、便秘/下痢、排尿障害、さらにドライアイやドライマウスがおこ
りやすくなることなどを、表1を参照しながらご理解ください。また、交感神経活動上昇から高血圧、高
血糖などの疾患が起こりやすくなることもお分かりでしょうか。
自律神経系の働き
文献
*1. Weissman A et al, Modulation of heart rate variability by estrogen in young women undergoing induction of ovulation. Eur J Appl Physiol 2009,105;381-6.
*2. Mercuro G et al, Evidence of a role of endogenous estrogen in the modulation of autonomic nervous system. Am J Cardiol 2000,85;787-9.
*3. Wyss JM & Carlson SH, Effects of hormone replacement therapy on the sympathetic nervous system and blood pressure. Curr Hypertens Rep 2003, 5;241-6.
*4. Papka RE & Mowa CN, Estrogen receptors in the spinal cord, sensory ganglia, and pelvic autonomic ganglia. Int Rev Cytol 2003, 231;91-127.
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