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- 田中冨久子のホルモン学講座 -
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第1回: エストロジェンと睡眠の
深い関係
第2回: 閉経はヒトの進化を示す
ものだというが
第3回: エストロジェンは最も古代
型の性ステロイドホルモン
第4回: エストロジェンは女性の
からだと心にこんな作用をおよぼす
第5回: 女性の更年期症状は
交感神経活動亢進と副交
感神経活動低下の現れ
第6回: 女性の脳はエストロジェン
によって活性化される
- エストロジェンによる
アセチルコリンの分泌
第7回: アルツハイマー型認知症
とエストロジェンの関係
(1)原因物質アミロイド
ベータ蛋白の脳内増加は
40代後半から始まる
第8回: アルツハイマー型認知症
とエストロジェンの関係
(2)アミロイドベータ蛋白
の脳内増加はエストロ
ジェンの減少と関係
第9回: アルツハイマー型認知症
とエストロジェンの関係
(3)17ベータ-エストラジ
オールの補充が認知症
発症を効果的に抑える
第10回: ホルモン補充療法の意義(2013年ホームページのご挨拶から)
- 診 療 時 間 -
木曜日: 9:00 ~ 12:30
14:30 ~ 18:00
男性外来 18:00 ~ 19:00
金曜日: 9:00 ~ 12:30
14:30 ~ 18:00
土曜日: 9:00 ~ 12:30
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HOME > 田中冨久子のホルモン学講座 > 第9回 アルツハイマー型認知症とエストロジェンの関係(3)
 田中冨久子のホルモン学講座
アルツハイマー型認知症とエストロジェンの関係 (2)アミロイドベータ蛋白の脳内増加はエストロジェンの減少と関係
 第8回講座で、アルツハイマー型認知症の発症が、アセチルコリン仮説によるものであれ、アミロイド
ベータ仮説によるものであれ、エストロジェンによって抑えられる可能性が高いことをお話しました。
それを示した研究の多くは実験室で行なわれたものではありましたが、エストロジェンの種類としては
特に17ベータ-エストラジオールであることも示唆されました。本講座では、疫学的/臨床的なアプロ
ーチから、アルツハイマー型認知症の発症や治療に有効なエストロジェンが17ベータ-エストラジオー
ルであることをお話ししようと思います。

ホルモン補充療法に用いられているエストロジェン剤の種類
 本講座のタイトルの17ベータ-エストラジオール(E2)というのは、日本では数年前から更年期女性に
おけるホルモン補充療法で頻用されるようになったエストロジェンです。女性の卵巣で合成される卵胞
ホルモンそのもので、パッチやジェルという経皮投与剤のほか、経口投与剤もあります。

 一方、1940年代以降、約10年前まで、欧米諸国で行なわれていたホルモン補充療法の主流は、雌ウ
マの尿から分離された結合型ウマエストロジェン(CEE,商品名はプレマリン)を用いたものでした。ホル
モン補充療法は欧米のように活発ではありませんが、日本でも勿論そうでした。

 CEE中のエストロジェンの主なものはエストロン(E1)で、エストロンの硫酸塩となっていますので、
これが結合型と言われる由縁です。肝臓で代謝を受けてエストラジオールになりますが、その他、
知られていないステロイドが少なくとも10種含まれていると言われます。 ただ、CEEおよび子宮がん
の発症を抑えるために併用された酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)と呼ばれる黄体ホルモンを
用いたホルモン補充療法は、認知機能に効果があることを確かめようとアメリカのWHIと WHIMSが
行なった大規模臨床試験で思わぬ副作用を起こしました。そのため、この大規模試験は、突然、
中止の憂き目にあいました。報告は2002年、2004年(文献1、2)になされましたが、それ以後、CEE(およびMPA)の使用頻度は激減したと言われます。

 エストロジェンがアルツハイマー型認知症の発症を抑えるか、あるいは改善させるかという課題は、
このような異なるエストロジェンを用いた観察の歴史があるため、その回答に混乱が生じているように
見えますが、しかし、きちんと整理してみると、ネガテイブなエストロジェン作用よりも、むしろ希望を
持たせるポジテイブな作用が浮かび上がってくるように見えます。以下にその概略をお話ししましょう。

CEE(プレマリン)を用いたホルモン補充療法から何がわかったか
 さきに話しましたように、CEEは半世紀以上にわたって世界中で用いられてきましたので、その認知
症発症への効果については沢山の報告が出されて来ています。それらの研究は、CEEが長い年月に
わたって更年期障害治療の主流を締めて来たゆえに可能であったともいえるでしょう。閉経時に使用
されたホルモンの効果を、認知症の好発年齢の80歳という高齢期に確かめることが可能だからです。
そのうち最もインパクトのあったものは、例のアメリカでの大規模試験で、65歳以上で使用されても、
認知症の発症をむしろ増加させる可能性があるというものでした。

 しかし、それまでに各国で行なわれた観察からも、CEEの認知症発症の抑制効果には、投与の年齢
によって違いがあることが強調されてきています(文献3-5)。 もしプレマリンによるホルモン補充療法
を50-65歳の間に受けたとしたら、たとえそれが短期間であっても、もっと高齢になってからの認知症
の発症が減少するという仮説、「臨界期」仮説、が提唱されるようになりました。65歳以上のネガテイブ
作用については、もしあるとすれば、併用されたMPAのため、とも言われていますが、結論は先です。

17ベータ/エストラジオールを用いたホルモン補充療法は認知機能に良い効果をもたらす
  17ベータ/エストラジオールの補充はCEEにくらべ、ずっと後に始まったものですので、認知症の
後発年齢の80歳という高齢まで経過観察した研究は不可能です。そのため、閉経後の女性たちの認
知機能におよぼす効果を調べた研究が進んでいます。

 例えば、アルツハイマー型認知症の危険因子をもつ閉経後の女性たち(49-68歳)において、
17ベータ/エストラジオールを用いたホルモン補充療法を行なうと、認知機能がCEEの補充療法を受
けた女性たちよりも良かったという研究報告があります(文献6)。また、すでにアルツハイマー型認知
症を発症した閉経後女性たち(65-89歳)において、17ベータ/エストラジオールのパッチ(経皮投与)
によるホルモン補充療法を1年間行なうと認知機能が改善した、という報告もあります(文献7)
同じく、アルツハイマー型認知症の閉経後女性たち(55-85歳)においても、たった3ヶ月間の17ベータ
/エストラジオールのパッチで認知機能の上昇が認められたとの報告があります(文献8)。そして、
この研究では、黄体ホルモンーMPA-の併用の有無にかかわらず、効果があったそうです。

 17ベータ/エストラジオールのパッチの効果を80歳まで追った研究結果が出るのを待つのは、現在50歳前後にある女性たちにとっては不可能に近いことです。それなら、毎年のがん検診を欠かさずに受けながら、エストラジオールを用いたホルモン補充療法を受けることが得策ではないでしょうか。

文献
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Craig MC, Murphy DG Estrogen therapy and Alzheimer's dementia.
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Whitmer RA et al. Timing of hormone therapy and dementia: the critical window theory revisited.
Ann Neurol 2011. 69; 163-169.

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Am J Geriatr Psychiatry 2011. 19; 791-802,
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women with Alzheimer disease: a 12 month randomized double-blind, placebo-controlled study of low
dose estradiol and norethisterone. Am J Geriatr Psychiatry 2010. 18; 11-20
*8. Wharton W et al. Short-term hormone therapy with transdermal estradiol improves cognition for
postmenopausal women with Alzheimer’s disease: Results of a randomized controlled trial.
J Alzheimers Dis 2011. 26;495-505.
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